要点: 国内で広く使われている MW WP Form プラグインで、[mwform_file][mwform_image] のショートコードがバージョン 5.2(2026年中リリース予定)で削除されます。お問合せフォームでファイル添付や画像アップロードを使っているサイトは、何もしないままだと一部の機能が失われます

その警告、見落としていませんか?

WordPress 管理画面の「テーマを更新」あるいはダッシュボードに、以下のような警告メッセージが表示されているサイトがあります。

MW WP Form: Notice of feature removal

The [mwform_file] and [mwform_image] shortcodes will be removed in version 5.2 (planned for release within 2026).

The following form(s) currently use these shortcodes: ...

結論を先に言うと、これは「2026年中にあなたのフォームのファイル添付機能が動かなくなる予告」です。クライアントサイトを抱えている運用者には、無視できないアナウンスです。


何が削除されるのか

ショートコード役割
[mwform_file]フォームにファイル添付欄を表示(履歴書・問診票・申込書類など)
[mwform_image]フォームに画像アップロード欄を表示(証明写真・現場写真など)

これらのショートコードは MW WP Form でファイル受付フォームを作るときの主役です。廃止 = 既存のファイル受付フォームが全滅を意味します。

廃止のリリース時期は「2026年中」と幅があるため、運用現場では最短で 2026年初頭から本番影響が出始める前提で動くべきです。


影響を受けているサイトを確認する 2 つの方法

方法 1:管理画面の警告メッセージ

MW WP Form 自体が、影響を受けているフォーム名を警告メッセージ内に列挙してくれます。これが一次情報として最も正確です。WordPress 管理画面 → ダッシュボード or プラグイン更新画面 で確認できます。

方法 2:WP-CLI で全フォーム一括確認

複数サイトを管理している運用者向け。SSH 経由で WP-CLI を叩けば、ショートコードを使っているコンテンツを一発で洗い出せます。

# mwform_file または mwform_image を使っている投稿(フォーム)を一覧
wp post list --post_type=mw-wp-form --field=ID --format=ids \
  | xargs -n1 -I{} sh -c "wp post get {} --field=post_content | grep -lE 'mwform_(file|image)' && echo 'Form ID: {}'"

複数サイトを一括して wp-cli.yml でバッチ処理することも可能です。クライアント数が多い運用会社であれば、今すぐスクリプトを回して影響範囲を可視化するのが最初の一手になります。


なぜこの問題は深刻なのか

フォームは Web サイトにおける「業務の入口」です。問合せ、資料請求、採用エントリー、医療系サイトの問診や予約申込、申込書のアップロード — どれも収益や信頼に直結します。

ファイル添付フォームが動かなくなった瞬間、

  • 顧客は問合せの完了を諦めて去る
  • スタッフは「届かない問合せ」を取り戻すコストを払えない
  • クライアントからは「いつから壊れていたのか」と問い詰められる

しかも個人情報や特定個人情報を扱うフォームの場合、「動かない」だけでなく、「送信中の中途半端な状態でデータが漏れる」設計上の事故にもつながりかねません。プラグイン更新は単純なバージョンアップ作業に見えても、その背後には業務継続と信頼性のリスクが常にあります。


緊急対応:時間を稼ぐ

本質対応(=移行)には数週間〜数ヶ月の準備が必要です。それまでの間、「うっかり 5.2 に上げてしまう事故」を物理的に防ぐ必要があります。

ステップ 1:自動更新を止める

WordPress 5.5 以降は、プラグイン一覧画面の右端に「自動更新」列があります。MW WP Form の行で 「自動更新を無効化」 をクリック。

ステップ 2:更新通知も非表示にする(上級者向け)

「自動更新を止めた」だけでは、誰かが管理画面で手動更新ボタンを押せば 5.2 に上がります。これも防ぎたい場合は、子テーマの functions.php に以下を追加します。

/**
 * MW WP Form を更新対象から除外する(移行完了までの一時措置)
 * ⚠️ セキュリティ更新の通知も見えなくなるリスクあり。
 *    解除予定日をコメントに必ず明記し、カレンダーにリマインダーを設定すること。
 *
 * 解除予定: 2026-06-30 / 移行完了 or 移行先決定後に削除
 */

// (1) 自動更新を停止
add_filter( 'auto_update_plugin', function( $update, $item ) {
    if ( isset( $item->plugin ) && $item->plugin === 'mw-wp-form/mw-wp-form.php' ) {
        return false;
    }
    return $update;
}, 10, 2 );

// (2) プラグイン更新一覧から完全に除外(更新通知が消える)
add_filter( 'site_transient_update_plugins', function( $value ) {
    if ( isset( $value, $value->response['mw-wp-form/mw-wp-form.php'] ) ) {
        unset( $value->response['mw-wp-form/mw-wp-form.php'] );
    }
    return $value;
});

⚠️ 通知非表示の落とし穴

通知を消す行為は強力な反面、諸刃の剣です。MW WP Form 側でセキュリティ脆弱性が発見されても通知が来ません。コードを書いた瞬間に、解除予定日とカレンダーリマインダーをセットで仕込むことを強く推奨します。コードのコメント自体に解除予定日を書き込むのが最も忘れにくい運用です。


本質対応:移行戦略

時間稼ぎだけでは事故を先送りしているにすぎません。5.2 リリース時期から逆算して、本質対応である移行を進めます

逆算スケジュール感

時期やること
〜2026年Q1移行先プラグインの選定・テスト環境での検証
〜2026年Q2各クライアントサイトでの移行作業・並行稼働
2026年 5.2 リリース直前旧フォームの完全切り替え・MW WP Form の削除 or 据え置き判断
5.2 リリース後旧バージョン据え置きサイトの最終移行

代替プラグインの比較

プラグイン特徴移行コスト
Contact Form 7 + Drag and Drop Multiple File Upload国内シェア No.1。[file] フィールドで同等機能。情報量が豊富。中(フォーム作り直し必要)
WPFormsUI が現代的。条件分岐・支払い連携など機能豊富。フリープランあり。中〜大(学習コスト)
Forminatorフリープランで十分実用的。フォーム以外(投票・クイズ)にも対応。
MW WP Form 公式の代替手段開発元から代替方式が案内される可能性あり。要・公式情報のフォロー。不明(情報収集中)

選定時に重要なのは、機能の有無だけでなく「過去 3 年の更新頻度」「バージョン互換性のトラブル履歴」「配布元の信頼性」です。プラグインの寿命は思ったより短く、今度移行先に選んだプラグインも 5 年後には同じ問題を起こす可能性がある前提で判断すべきです。


移行作業の落とし穴 7 つ

実際にフォーム移行を行うと、見落としがちなポイントがいくつもあります。

  1. 既存の回答データ(履歴)の扱い — 旧プラグインに溜まった送信履歴は、新プラグインに自動移行されません。「過去履歴は CSV エクスポートで保管 → 新フォームは履歴ゼロから」のスタンスを最初に決める。
  2. 添付ファイルの保存場所 — プラグインによって保存先(DB or wp-content/uploads/ の特定フォルダ)が違います。移行時に旧ファイルへの参照が切れないか確認。
  3. メール送信先・自動返信メールの引き継ぎ — 担当者宛の通知メール、ユーザー宛の自動返信、それぞれ再設定が必要。
  4. reCAPTCHA・スパム対策の再設定 — サイトキー・シークレットキーを引き継ぎ、移行後に必ず実機テスト。
  5. フォーム URL 変更による導線への影響 — 旧 URL から新 URL へ 301 リダイレクト。SEO 流入や広告ランディングへの影響も忘れずに。
  6. 個人情報の扱い・プライバシーポリシー — フォーム経由で取得する個人情報の扱いに変更がないか、ポリシーページの更新も必要。
  7. クライアント承認のフロー — テスト環境での確認 → クライアント承認 → 本番反映、の手順を必ず踏む。「動くと思って切り替えたら動かなかった」が一番痛い事故です。

移行成功のためのチェックリスト

移行前

  • 影響範囲のリストアップ(全クライアントサイトで実施)
  • 移行先プラグインの選定とテスト環境での検証
  • 旧フォームの送信履歴・添付ファイルのバックアップ
  • 移行スケジュールのクライアント共有

移行中

  • テスト環境での新フォーム実装
  • 実機でのファイル添付・送信テスト
  • 自動返信メール・通知メールの動作確認
  • スパム対策・reCAPTCHA の動作確認

移行後

  • 旧フォーム URL からの 301 リダイレクト
  • 数日間の並行稼働(旧フォームを残しておく)
  • 安定稼働確認後に旧プラグイン削除を検討
  • クライアントへの完了報告

まとめ — 「忘れない」が一番難しい

MW WP Form の機能廃止は、技術的には複雑な問題ではありません。本当に難しいのは「何ヶ月も先のリリースを忘れずに動き続けること」です。

自動更新停止や通知非表示は強力な対策ですが、仕掛けた瞬間に解除予定日を決めてカレンダーに登録しないと、移行を完全に失念して 2026年に事故を起こす運用会社が必ず出ます。

WordPress 運用は、コードを書く能力よりも変化を予測してスケジュールを設計する能力で差が出る仕事です。今回のような「先のリリースに対する備え」を当たり前にこなせる現場が、数年後にも信頼を保ち続けます。

このタイミングで、ぜひ自社で運用しているサイト・受託しているサイト全件で影響範囲の棚卸しをしてみてください。