高性能AIほど、何を頼むかより何を渡さないかが大事になる

高性能AIほど、何を頼むかより何を渡さないかが大事になる

AnthropicがClaude Fable 5を一般利用向けに公開しました。

現在は政府の要請で使えなくなっていますが、Fable 5は、AnthropicがMythos級と呼ぶ高性能モデルを、一般利用に向けた安全策とともに提供するものです。

公式発表では、長く複雑な作業、ソフトウェア開発、知識労働、画像理解などで高い能力を示すと説明されています。

一方で、もうひとつ注目したい点があります。

それは、データ保持に関する方針です。

Anthropicのヘルプでは、Mythos級モデルに送信されたプロンプトと出力は、信頼性と安全性の目的で30日間保持されると説明されています。

このデータは新しいClaudeモデルの学習には使わないとされていますが、業務利用ではかなり重要な話です。

高性能AIを使うほど、「何を頼むか」だけでなく、「何を渡さないか」を考える必要があります。

便利になるほど、入力する情報も増える

AIの性能が上がると、つい多くの情報を渡したくなります。

長い議事録。

顧客とのメール。

社内資料。

見積書。

契約書。

ソースコード。

管理画面のスクリーンショット。

たしかに、AIは前提情報が多いほど良い回答をしやすくなります。

しかし、業務で扱う情報には、AIにそのまま渡してよいものと、渡す前に整理すべきものがあります。

高性能AIほど、長い文脈を扱えます。

だからこそ、うっかり渡してしまう情報も増えます。

30日保持は、悪いことではなく前提条件

データが30日保持されると聞くと、不安に感じるかもしれません。

ただし、これは必ずしも悪いことという意味ではありません。

Anthropicは、複雑な不正利用や新しい攻撃手法を検知するため、安全性の目的で保持すると説明しています。

また、学習には使わないこと、ほとんどの場合30日後に削除されること、人間のアクセスには制限や記録があることも説明されています。

大事なのは、良い悪いを感情で判断することではありません。

業務で使うなら、そのサービスのデータ保持方針を前提に、何を入力してよいかを決めることです。

これはClaudeに限った話ではありません。

ChatGPT、Gemini、Claude、その他のAIサービスを使うときも同じです。

会社でAIを使う前に決めたい入力ルール

AIを業務で使うなら、まず入力ルールを決めるべきです。

細かい規程を作る前でも、最低限の線引きは必要です。

  • 顧客名をそのまま入れてよいか
  • 個人情報を入れてよいか
  • 契約書や見積書を入れてよいか
  • 未公開の企画を入れてよいか
  • ソースコードを入れてよいか
  • 管理画面やサーバー情報を入れてよいか
  • 画像やPDFをアップロードしてよいか
  • どのAIサービスを使ってよいか

このあたりが曖昧なままだと、便利さに引っ張られて、必要以上の情報を入力してしまいます。

AIを使うこと自体より、情報の扱い方が問題になるケースは多いはずです。

匿名化と要約で、かなり安全に使える

AIに情報を渡すときは、必ずしも元データをそのまま入れる必要はありません。

多くの場合、匿名化や要約で十分です。

たとえば、顧客名を「A社」に置き換える。

個人名を削る。

住所や電話番号を削除する。

契約金額をざっくりした表現にする。

実際のメール全文ではなく、相談内容だけを要約する。

ソースコード全体ではなく、該当するエラーや関数だけを渡す。

これだけでも、AIはかなり役に立ちます。

大事なのは、AIに必要な情報だけを渡すことです。

高性能AIだから全部渡せばいい、という考え方は危険です。

AIに渡す情報は、社外に出す前提で考える

実務では、AIに入力する情報を「社外に出してよい情報か」という視点で見ると判断しやすくなります。

もちろん、サービスによってデータの扱いは違います。

法人向けプラン、API、無料プラン、個人アカウントでも条件は異なります。

それでも、迷ったら一度立ち止まるべきです。

この顧客名は必要か。

この契約書全文は必要か。

この管理画面のURLは必要か。

このAPIキーは絶対に入れてはいけないのではないか。

AIの回答精度を上げるために、必要以上の情報を渡していないか。

この確認をするだけで、かなりリスクは下がります。

ナレッジ型AIでも、管理する情報の線引きが必要

レイヤーワークスでは、サイト内の固定ページやブログ記事、FAQなどをもとに回答するナレッジ型AIチャットボットの活用を考えています。

この場合も、情報の線引きが重要です。

公開ページの情報を使うのか。

管理者が入力した基本ナレッジを使うのか。

社内資料まで含めるのか。

顧客別の非公開情報を扱うのか。

どこまでをAIに読ませるかで、設計は大きく変わります。

ナレッジ型AIは便利です。

しかし、便利にするほど、情報の管理も大事になります。

AIに答えてほしい情報と、AIに触らせてはいけない情報を分けること。

ここが、これからのAI導入でかなり重要になると思います。

高性能AI時代は、入力前の判断が仕事になる

AIの性能は上がり続けています。

Claude Fable 5のようなモデルが一般利用に広がることで、AIに任せられる作業は増えていきます。

ただし、その分だけ入力する情報の重みも増します。

何を頼むか。

どのAIを使うか。

どの情報を渡すか。

どの情報は渡さないか。

出力をどう確認するか。

これらを決めることが、AI時代の業務設計になります。

高性能AIを安全に使うには、AIの能力だけを見るのではなく、入力する情報の境界線を決めること。

ここを整えておく会社ほど、AIを安心して活用しやすくなるはずです。