愛知県のAiVoyage。有効活用するには会社側の準備が重要

机上のノートパソコンを一緒に操作する手元

AIを使える人が社内に入れば、業務改善が進むはず。そう期待しても、最初に「何を改善してほしいか」を説明できなければ、相手は仕事を始めにくくなります。

愛知県は2026年9月、学生向けDX・AI課題解決インターンシッププログラム「AiVoyage」を発表しました。この取り組みを入口に、地元企業がAIやデジタルに詳しい人へ仕事を渡す際の、課題と材料のそろえ方を考えます。

AiVoyageは、学びと実践をつなぐ取り組み

県の公式案内では、ワークショップで課題解決の手順やデジタル技術を学び、スタートアップで実践する流れが説明されています。プログラムの実施期間は2026年10月下旬から2027年3月末までと案内されています。

2026年10月7日の確認時点では、学生の募集期限は10月9日、受入スタートアップの募集期限は10月16日です。受入対象には県内のスタートアップやSTATION Ai会員などの条件があります。一般の企業がすべて対象ではないため、参加を検討する場合は公式の募集要項を確認してください。

この記事は参加申込みの手順より、仕事の渡し方を中心に扱います。プログラムへの参加に限らず、社員、外部の開発担当、AI活用の支援者へ相談するときにも共通する考え方です。

「AIで何か改善して」では、仕事が決まらない

AIに詳しい人でも、会社の困りごとは最初から分かりません。例えば「事務を効率化したい」では、請求、見積もり、顧客対応、報告書のどこを変えるべきか判断できません。

まず、具体的な作業を一つ選びます。「毎週、三つの表を見比べて転記している」「問い合わせに必要情報が足りず、何度も聞き直している」といった形です。作業の名前だけでなく、どこで時間やミスが発生するかを説明します。

AIの利用を最初から必須にしないことも大切です。入力フォームを直す、データの保存場所を決める、計算をプログラムにするだけで解決する場合があります。困りごとを先に置けば、適切な方法を選びやすくなります。

渡す資料は、入力と完成例をセットにする

仕事を説明するときは、現在の入力資料と、正しい完成例を一組にして用意します。報告書なら写真やメモと確定報告書、見積もりなら依頼内容と確認済みの見積書です。

その間に人が何を判断したかも説明します。書式を変えただけなのか、数量を確認したのか、社内ルールに従って対象外の依頼を除いたのか。完成品だけを見ると、こうした判断が隠れてしまいます。

資料は機密情報を除いたサンプルから始めます。実データが必要になった場合は、アクセスできる人、利用する環境、持ち出せる範囲を決めます。「改善のためだから」と、顧客情報や認証情報を広く渡すことは避けましょう。

完成条件を、担当者の仕事で表す

「AIが動くこと」を完成条件にすると、試作画面ができたところで評価が止まりがちです。実務では、担当者が必要な内容を確認でき、既存の仕事へ渡せることが重要です。

例えば問い合わせ整理なら、担当部署、質問の要点、不足情報を出し、不明な案件を確認待ちにできること。報告書なら、写真番号と説明が対応し、測定値を原記録で確認できること。どの状態なら仕事で使えるかを先に書きます。

通常案件だけでなく、情報不足、形式の違い、対象外の依頼などを試験用に用意します。すべてに自信ありげな答えを出すより、判断できないときに止まり、人へ渡せるほうが必要な仕事もあります。

試作中に相談できる人を決める

作業担当が分からない条件に出会ったとき、誰へ聞くかを決めます。日常業務を知る担当者、承認する人、システム管理者が別なら、役割も伝えます。

短い間隔で試作を確認すると、「欲しかったものと違う」が大きくなる前に修正できます。確認する人が忙しい場合は、見る項目と返答する日を決めておきます。相手へ作業を渡したあと、会社側の判断が止まっていると、改善も進みません。

試作段階では、外部送信や本番データの更新を切り離します。サンプルで入力から結果まで試し、担当者が確認する形から始めると、何を直すべきか話しやすくなります。

作ったあとに残るものまで決める

短期間の開発やインターンシップでは、完成したツールのほかに、設定方法、入力例、試験結果、使えない条件、問い合わせ先を残してもらいます。開発した本人だけが動かせる状態では、継続して使えません。

費用が発生する外部サービスやモデルがあるなら、契約者、更新担当、利用量の確認方法も整理します。AIのモデルやAPIは変わるため、いつ誰が見直すかを決めることも運用の一部です。

AI人材の力を活かすには、会社側が課題、資料、完成条件、確認担当を用意することが必要です。この四つをそろえる作業そのものが、社内の業務を整理する一歩になります。